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九十九屋さんたの妖怪古今録

未来を見通す占い『寅侍』

占いか、それとも呪いか、大奥で行われていたという占い

信じるに足るとされる占いが江戸時代にありました。その名も寅待といいます。

 寅待は、一生の運、いうなれば未来を見通す占いです。これを行うのは、寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻であるといいます。すると12年ごとにしかできないので、寅の月ならよいと言うことになっていました。

 まずは、前日から身を清めて用意します。
 行う場所は、四面がどこも開き出入りのできる部屋。最近では難しい全部襖とかの部屋ですね。
 服装は白装束。髪はしっかり結んでおきましょう。用意するものは鏡。これは洗い清めたものです。そして一本の蝋燭。
 これで準備は万端です。そして四面を閉めて、占いが終わるまで、自分を含めて誰も出入りしてはいけません。
 寅の方角(東北)に鏡を置きます。灯りのついた蝋燭に向かって、拝礼合唱して自分の将来を願います。そして鏡をじっと見つめるのです。そこに映る姿が、行ったものの一生の運であると。

 しかし、この占い。出た結果を誰にも話してはいけないことになっています。そうしてしまうと、効果がなくなってしまうというのです。見えた未来が変わってしまうということですね。

とある女中が寅待を行ったところ、結局見えたのは白い衣に身を包んだ自分の姿でした。確として見えなかった白い衣。それは何でしょうか?
 花嫁である白無垢でありましょうか。女中が思ったのは、白装束、即ち死者となったものが身につける服だったのです。自分がどうなってしまうのか、近いうちに死んでしまうのか。そんな恐れのせいか気鬱、今でならノイローゼにかかってしまい、衰弱した女中は亡くなってしまいました。
 未来を見通すはずの占いが、呪いのようになってしまったのです。それは本来見ることができない未来を見てしまったせいかもしれません。

 未来を見通す占い。その条件が意外とシビアだったのにお気づきになられたのでしょうか。それも、そのはずでこの占いは、市井というよりは奥、つまり大奥といったそれなりに身分の高い家の中で、ひっそりと行われたといいます。もしかすれば、将軍様が一目惚れされ、今とは全くちがう未来があるのかもしれないの空間。そこで行われたのが寅待なのです。失敗した話しか伝わっていないのは当然で、うまくいった結果の方は、きっと口外されなかったのでしょう。

 さて夢の内容を話したところ、その話がなくなってしまうというモチーフの話は各地に伝わっています。次回はこうした夢買いの話をしたいと思います。
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