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九十九屋さんたの妖怪古今録

浅茅が宿

雨月物語のなかのお話です

故郷を離れて、新しい居場所を築くのは大変な事だと思います。
いわゆる都で一旗あげる。
その志を胸に旅立ったもので成功したものもあったでしょう。しかし戻ってきて、命があったものの、財産を失い身一つで、故郷に帰るものもありました。

江戸時代に作られた雨月物語に『浅茅が宿』という物語があります。
勝四郎という男がおりました。彼は先祖代々の土地を持ち、裕福に暮らしていましが、土を耕すのを好みませんでした。そこで知人の商人と共に、商人として都に上ることにしたのです。妻の宮木は賢い女性で、夫の行動を止めましたが聞き入られはしませんでした。後に天下は乱れ、勝四郎はもうけるどころではありませんでした。加えて病気になり、寝付いてしまいました。

そして数年が過ぎ、勝四郎は故郷に戻ってきました。荒れ果てて廃屋のような家には、別人かと思われるほど、変り果てた姿の妻、宮木がおりました。二人は離れ離れであった年月の話をしながら一夜を過ごしますが、一夜あけると妻の姿はありませんでした。
寝所には塚が作られていて、勝四郎は妻がこの世のものでないことを悟ります。

勝四郎は、近くの老人から、妻・宮木が気丈にも一人で夫を待ち続けていたこと、約束の秋が過ぎた次の年に死んだことを聞き、声を出して泣き、念仏をして妻を弔いました。

このお話の舞台となるのは、真間の手児奈で有名な真間です。
もしも、真間の辺りを訪ねることがありましたら、物語をそっと思い出していただけたら幸いです。

雨月物語は他にも『蛇性の淫』や『吉備津の釜』など恐ろしくも美しい物語が収録されています。よろしかったら手にとって見てください。
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